2019/09/30
この世に生きているすべての生き物が、幸せでありますように。
タイやミャンマー(旧ビルマ)・スリランカ(旧セイロン)などで行われているテーラワーダ仏教(かっての小乗仏教、今では初期仏教・上座仏教・上座部仏教・根本仏教・原始仏教などとも呼ばれています)では、ヴィパッサナー瞑想を行う前に、慈悲の瞑想を行います。
テーラワーダ仏教とは
テーラワーダ仏教の「テーラワーダ」とは「長老の(thera)教え(vāda)」を意味します。お釈迦様はその教えを経典などの文書ではなく、お弟子さんたちに直接話して教えました。お釈迦様から教えを受けた弟子たちは、長老となって多くの弟子たちにその教えを話して伝えます。そうして口伝によって伝えられた教えは、のちにパーリ語の経典にまとめられました。この教えは、多くの比丘(出家僧)と在家信者たちの努力により、約2600年間の長きにわたって実践され、受け継がれてきました。テーラワーダ仏教は、お釈迦様の説かれた教えとその実践方法の一つ一つを、当時のまま、今日まで伝えてきた純粋な体系なのです。
マインドフルネスが、テーラワーダ仏教のヴィパッサナー瞑想から仏教に関する宗教的な部分を取り除いてできたように、慈悲の瞑想も宗教的な部分を取り除いてマインドフルネスの中に取り込まれています。
ここでは『メッター・バーヴァナー』と呼ばれ、伝統的にテーラワーダ仏教で行われている「慈悲の瞑想」を掲載してみます。
『慈悲の瞑想』全文
私は幸せでありますように
私の悩み苦しみがなくなりますように
私の願いごとが叶えられますように
私に悟りの光が現れますように
私は幸せでありますように(この部分を3回唱える)
ここで短く瞑想する
私の親しい生命が幸せでありますように
私の親しい生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の親しい生命の願いごとが叶えられますように
私の親しい生命に悟りの光が現れますように
私の親しい生命が幸せでありますように(この部分を3回唱える)
ここで短く瞑想する
生きとし生けるものが幸せでありますように
生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように
生きとし生けるものの願いごとが叶えられますように
生きとし生けるものに悟りの光が現れますように
生きとし生けるものが幸せでありますように(この部分を3回唱える)
ここで短く瞑想する
*2016年秋より、これまで「人々」としていた言葉を「生命」に置き換えて慈悲の瞑想をいたします。
ここまでが前半です。
私が習ったときは「生命」ではなく「人々」でしたが、次の後半部分では「人々」では抵抗の出る人がいるので、「生命」に替えたのだと思います。
後半です。
私の嫌いな生命が幸せでありますように
私の嫌いな生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の嫌いな生命の願いごとが叶えられますように
私の嫌いな生命に悟りの光が現れますように
私を嫌っている生命が幸せでありますように
私を嫌っている生命の悩み苦しみがなくなりますように
私を嫌っている生命の願いごとが叶えられますように
私を嫌っている生命に悟りの光が現れますように
そして最後に
生きとし生けるものが幸せでありますように
と3回唱え、短く瞑想を入れて終わります。
太字の部分引用 日本テーラワーダ仏教協会
「生命」が「人々」と言っていた時代、後半部分でとても嫌いな人の顔が浮かんで来て、どうしても言えないときがありました。
その時師匠から
「あなたは世の中に生きている人たちが皆、幸せになってもらいたいと思わないのですか。その中にはあなたの嫌いな人たちもいるのですよ。」
と言われて、初めはいやいやながらやっていました。
そのうち私の嫌いな人に対して、「あの人もああして生きるのに一生懸命頑張っているのだなぁ」と思えるようになり、「何とか幸せになってもらいたい」と考えることが出来るようになりました。
今でも仕事上のことで、たまに言い争いをしますが、少なくとも相手の人格を傷つけるような言葉は使わなくなりました。
慈悲の瞑想をお手本通りきっちりとやると、30分ぐらいかかるので
私が幸せになりますように
私の親しい人たちが、幸せになりますように
私の嫌いな人たちや、私を嫌っている人たちも、幸せになりますように
この世のすべての生き物が、幸せになりますように(3回)
と前後に短い瞑想を入れて、朝起きたときと夜寝る前に、実行しています。