2019/09/30
ストレスや苦しみを克服するためには、まず「気づく」こと
私の体の動きには、2つの種類があります。
一つは、自分の意志の命令で動いている場合。普段行ってる動きは、大部分がこれです。
二つ目は、体が勝手に動いている場合です。心臓や消化器官、呼吸器などです。自殺したくて、毒薬を飲むとか、首を吊るとかしない限り、息を止めてもある限界までくると、勝手に呼吸が始ります。心臓なんか特にそうです。止めようと思っても、意志の力だけでは止まりません。
ところが一つ目の自分の意志で動いている場合でも、無意識のうちに勝手に動いている場合があります。普段歩いているとき「右足、上げる」「前に、運ぶ」「右足下ろす」「左足上げる」・・・などとやっていませんよね。人と話しながらや、スマホを見ながらでも、足は勝手に動いて、歩いて行けます。
この時、体は「自動操縦モード」又は「自動運転モード」で行動しています。
「自動思考」と「スキーマ」
実は私たちの脳の動きにも「自動運転モード」があり、認知心理学では「自動思考」と呼んでいます。
自動思考とは何か
自動思考(じどうしこう、英:automatic thought)とは、状況に対応して非常にすばやく、自分の意志とは関係なく自動的に湧き出る思考を指す。
引用ウィキペディア
例えば上司から何か注意された途端、「カチン」ときて怒り出した場合がそうです。
ただ注意されただけで、「怒り」が爆発する訳ではありません。普段から「相手の物言いが気に食わない」「皆の前でいつも私を馬鹿にしている」「意地が悪い」「私のことを毛嫌いしている」などの思いが、積もり積もって、あるきっかけで大爆発してしまうのです。
この様に過去の経験や記憶によって作られた、一連の体系化された知識を「スキーマ」と言います。
自分では正しく思考しているつもりでも、「自動思考」には大きな落とし穴があります。
まず
思考とは何か
思考(しこう、英: Thinking)は、考えや思いを巡らせる行動であり、結論を導き出すなど何かしら一定の状態に達しようとする過程において、筋道や方法など模索する精神の活動である。広義には人間が持つ知的作用を総称する言葉、狭義では概念・判断・推理を行うことを指す。知的直感を含める場合もあるが、感性や意欲とは区別される。
引用ウィキペディア
こうやって説明されても、分からないので簡単に言いますと
24+37=?
という問題があります。正しく思考すると「61」という答えが得られます。←当たり前!!。
「24+37=?」という問題には、「答え(ゴール)」があるということと、「61」という答えを得るためには、自分から積極的に問題を解こうとする意欲が必要です。
「ゴール」に到達するのには積極的に問題を解決しようとする、「ポジティブ」な姿勢が必要ということです。
ところがヒトというものは元来ナマケモノで、かつ出来るだけ楽をしたいという、性質があります。
更に自分にとって嫌なことは、出来るだけ避けたいという思いもあります。
そこでいちいち面倒な計算をしないで、パッと見て100に近ければ答えは「100」、少なく見える時は「0」にしてしまえば簡単です。これをスキーマにしてしまえば、合計が100未満の計算はいくらあっても、瞬時に答えを出すことができす。
先の上司との関係に戻すと、上司の物腰や態度、物の言い方などなんとなく気に食わない。さらに同じことを何度も何度も文句を言ってくる。いちいち対応するのが面倒なので、無視していると、ある日皆の前で、大声で叱責し始めてきた。こちらも日ごろ我慢をして従ってきましたが、ついに堪忍袋の緒が切れて、口論になってしまった。
こうなると職場は苦しみ以外の何物ではなく、一日中嫌な上司の顔が浮かんできて、仕事どころでは無くなってしまいます。仕事の効率が落ちることで、上司の圧力がさらに強くなり、負のスパイラルに落ち込んで行くばかりです。
上司にしては、日ごろのちょっとしたミスを改めてくれれば、仕事もはかどり、周囲の人の足を引っ張ることなく、対人関係も良くなると思い、注意しますが、一向に言うことを聞いて改めてくれません。それどころか、さらに注意すると逆ギレしてきて、扱いにくい部下になってしまいます。
こうなった原因は、過去の上司に対する嫌なスキーマによる「自動思考」で、自分が被害を受けているという妄想の世界に入ってしまい、自分を守るために攻撃的な態度をとってしまうことになります。
ついでに、
妄想とは何か
妄想(もうそう、英: delusion)とは、その文化において共有されない誤った確信のこと。妄想を持った本人にはその考えが妄想であるとは認識しない(むしろ病識がない)場合が多い。精神医学用語であり、根拠が薄弱であるにもかかわらず、確信が異常に強固であるということや、経験、検証、説得によって訂正不能であるということ、内容が非現実的であるということが特徴とされている。
引用ウィキペディア
なぜ妄想状態になってしまうかというと、上司から小言を言われたことにより、上司が嫌いになり、さらに上司に対して悪いスキーマが生まれ、そのスキーマによって判断するということが重なって、どんどん悪い妄想が成長してしまうためです。
この偏った判断を認知のゆがみと言います。
認知とは者の受け止め方や、考え方を言います。
主な認知のゆがみ
- 全か無か思考 ものごとを白か黒かのどちらかで考える
- 一般化のしすぎ たった1つ良くないことがあると世の中すべてそうだと考える
- 心のフィルター 良い部分を取り除き、良くないことばかり考える
- マイナス化思考 良い出来事も悪く解釈してしまう
- 結論の飛躍 根拠もないのにネガティブな結論を出してしまう
- 拡大解釈と過小評価 自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する
- 感情的決めつけ 理性的ではなく自分の感情で物事を評価してしまう
- すべき思考 自分や他人に対して、「~すべき」とか「~すべきでない」と考え、そうしないと悪いことをしたかのように感じる
- レッテル貼り 「自分はだめ人間だ」のように根拠もなく、極端な形で一般化してレッテルを貼ってしまう
- 個人化 良くないことが起きると、何でも自分中心に考え、周囲のせいにしてしまう
こうなってしまうと、怒っている本人は「自分が絶対正しい」と信じ切っているので、下手に忠告などしようものなら、かえって火に油を注ぐ結果になってしまい、手が付けられない状態になってしまいます。
あとは怒ってる本人が、怒っていることに「気づい」てもらうしかないです。
それには常にマインドフルネスの状態になれるよう練習して、「今ここ」で自分がどのような状態にあるか、「気づく」ようになることです。「気づいた」だけでも怒りの炎は小さくなります。