2019/09/30
このサイトに来てくださった皆様は『マインドフルネス』と聞くと、新しい瞑想法の一種だとお考えになると思います。
そうではなく『マインドフルネス』は、一種の心の状態を表しています。英語の[Mindfullness]を直訳すると「気を配っている状態」「意識している状態」となります。
『マインドフルネス』のもとになったのは、初期(小乗)仏教の、ヴィパッサナー瞑想です。『マインドフルネス』とは、ヴィパッサナー瞑想で使われるサティ(sati 仏教関係では「念」の字を当てますが、「気づき」の意味です)という言葉を英訳したものです。
「ヴィパッサナー」とは古代インドで使われていたパーリ語の「ありのままに・明瞭に・客観的に」を意味する「vi ヴィ」と、「観察する・観る・心の目で見る」を意味する「passanā パッサナー」が合わさった言葉です。
もう少し丁寧に言えば「目の前の出来事に対して、今何をしているか、気づいている状態」とでも言いましょうか。そのため「ヴィパッサナー瞑想」は「気づきの瞑想」とも言われています。
仏教はお釈迦様が、生老病死をはじめとするあらゆる苦しみを克服して生きる方法を生み出し、それを人々に伝えた教えです。ですから、お釈迦様が教えを始めたころの仏教は、神様にすがって助けを求める一般の宗教と違い、日々の悩みや苦しみは自分の心が生み出したことを気付かせ、そこから逃れる方法を教えたものです。
1979年「ヴィパッサナー瞑想」が苦しみや悩みが心から生じて、それを克服するのに大変有効な方法であることを確認したマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジンは、「ヴィパッサナー瞑想」の実践経験から、仏教色を抜いてマインドフルネスストレス低減法(MBSR)のプログラムを作りました。
ジョン・カバット・ジン
1966年から禅・ヨーガを実践し、1979年に、インサイト瞑想センターでのヴィパッサナー瞑想の実践経験をきっかけに、マサチューセッツ大学にストレス低減センター(マインドフルネスセンター)を起ち上げ、同大医学部教授となりました。
出典ウィキペディア
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)を、身体のストレスであるがん、慢性疼痛、心臓病や線維筋痛症などに応用したところ、薬の使用量が減ったとの研究結果が出ています。
参考(「マインドフルネスに基づくストレス低減プログラム」の健康心理学への応用 健康心理学研究』第21巻第2号、2008年、 57-67頁、及び ジョン・カバット・ジン『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房、2007年)
1991年には、ジョン・カバット・ジンのマインドフルネスストレス低減法をもとに、Z・V・シーガル、J・M・G・ウィリアムズ、J・D・ティーズデールらによって、うつ病、不安、燃え尽き、摂食障害といった認知に焦点を当てたマインドフルネス認知療法(MBCT)が開発されました。
マインドフルネス認知療法(MBCT)はマインドフルネス(気づき)を基礎に置いた心理療法で、心に浮かぶ思考や感情に従ったり、価値判断をするのではなく、ただ思考が湧いたことを一歩離れて観察するという、マインドフルネスの技法を取り入れ、否定的な考え、行動を繰り返(自動操縦)さないようにすることで、うつ病の再発を防ぐことを目的として使用され、効果を上げています。
参考( マーク・ウィリアムズ、ジョン・ティーズデール、ジンデル・シーガル、ジョン・カバットジン、(翻訳)越川房子、黒澤麻美『うつのためのマインドフルネス実践ー慢性的な不幸感からの解放』星和書店、2012年、及び Z・V・シーガル、J・M・G・ウィリアムズ、J・D・ティーズデール共著、越川房子監訳『マインドフルネス認知療法 うつを予防する新しいアプローチ』北大路書房 2007年)
この様に『マインドフルネス』は心理学の面から注目され、ストレスからくる障害や、うつ病などの治療に利用されてきました。
2000年代初め、Googieの社員チャディー・メン・タンによって『マインドフルネス』がビジネスにも有効なことが実証され、一挙に広まっていきます。