2019/09/30
自慈心を持とう
第5章「自分を責めないで」で書いた通り、日本の人たちは過去の失敗や将来の不安などから精神的に委縮し、自分の価値を過小評価してしまう傾向があります。
社会的な地位・身分、収入の多い少ない、自分の容姿、学歴、能力、住んでいる場所、住まいなどを他の人に比べて劣っていると感じて、劣等感に襲われたりします。
また職場や学校、家庭でもそうですが、ごく些細な事から喧嘩や口論をして、人間関係を悪くして、自己嫌悪に陥ってしまいます。
実はマインドフルネスやヴィパッサナー瞑想には悪い面があって、実行している最中にこのような思い出したくない事や、嫌な出来事などが次々と脳裏に出てくるのです。マインドフルネスを行って行くと、このような出来事に対して耐性が出来てくるのですが、慣れないうちはかえって落ち込んでしまうことになります。
そんな時には、この辛い世の中にもかかわらず、健気に生きている自分を褒めてあげてください。
そして『悲しんだり』、『辛く思ったり』、『苦しんだり』しても、自分を責めないで、人間だからしょうがないと思い、そのまま認めてあげて下さい。
いろいろな欠点があり、完璧ではないけれども、一生懸命生きている自分を、そのまま認めてあげ、愛おしんであげるのです。それが『自慈心』です。
『自慈心』と『自尊心』との違い
『自慈心』とは、自分で自分を評価することですから、他人の評価に対して影響されません。
反対に『自尊心』は他の人に対して自分がどれだけ優れているか、比べることによって生まれてきます。したがって、自分よりも優れている人や他の人から批判されてしまうと、萎んでしまい安定しません。
ですからしっかりとした『自慈心』を持つと、他の人の評価に一喜一憂することなく、安定した心で暮らすことが出来ます。
テキサス大学クリスティーン・ネフ博士は実践を通じた研究の中で『自慈心』を育てるために必要な3つの要素を上げています。
1.自分へのやさしさを持つ。
大切な人にするように、自らを励まし、理解し、やさしくします。
2.当たり前の人間観を持つ。
人間は誰でも不安定な存在で、欠点を持っていると意識します。
3.マインドフルネス。
今ここの瞬間に起きている出来事に対して、価値判断をすることなく受け入れます。
マインドフルネスによって、今この瞬間、自分が「つらい状態にある」とか「悲しんでいる」とか「苦しんでいる」とかに気づけば、それらの苦痛から逃れることが出来ます。
曹洞宗の開祖である道元禅師の教えに『念起即覚 覚之即失(念起こらば、即ち覚せよ、之を覚せば即ち失す)』という言葉があります。これは『つらい』とか『悲しい』とか『苦しい』という気持ちにまず気づきなさい。そういった気持に気づくことでそれらの気持ちが消えていく、という意味です。
仕事や運動などで、体が疲れてしまったときは、何をしますか。疲れたときは、おいしい物を食べて体力をつけ、お風呂に入ってゆっくり寝ることです。いつまでも『疲れた』『疲れた』と言っていても疲れは取れません。また『疲れていない』と自分の体に言い聞かせても無駄です。
それと同じで何時までも『つらい、つらい』と考えたり、『悲しくない』と言い聞かせても『苦しみ』は無くなりません。それらの気持ちに気づいたときは、済んでしまった事はしょうがないので、さっさと忘れて次の手段を考えるか、そのまま記憶から消して放っておいた方がよいのです。
普通『つらい』時や『悲しい』時、『苦しい』時には、感情の世界にどっぷりと浸かって、なかなか抜け出せないものです。こんな時一歩離れたところから自分を見つめなおして、『つらい思いをしている』『悲しんでいる』『苦しんでいる』と気づかせてくれるのが、「マインドフルネス」です。
テキサス大学クリスティーン・ネフ博士は、同僚のクリストファー・ゲルマー博士と連携して「マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC= Mindful Self-Compassion)」と呼ばれる8週間の教育プログラムを開発し、マインドフルネスが『自慈心』を育てるために有効であることを証明しました。その論文がこちらです。
APilotStudyand RandomizedControlled Trialof the Mindful
Self-CompassionProgram(マインドフルのパイロットスタディとランダム化比較試験 自己慈悲プログラム)